その他労務相談
当社では年に数日、有給取得奨励日を設けており、対象日は全員が年次有給休暇を使用します。新入社員で年次有給休暇が発生する前に有給取得奨励日が到来する場合、年次有給休暇を前借させて休ませることはできますか
原則として、年次有給休暇を前借りさせることはできません。
年次有給休暇は、基準日に法定の日数を付与する必要があります。入社後6ヵ月経過時に有給休暇を付与する際、前借りした日数を会社が差し引くことにより法定の10日間を下回る日数を付与する取り扱いは、「合計すれば法定の日数に達している」としても認められません。ただし、就業規則等に法定超過分の利用方法について明記したうえで法定を上回る付与を行っている場合は、超過分については基準日よりも前に付与しても問題ありません。
例えば、入社6ヵ月後に会社が法定を上回る12日間の年次有給休暇を付与している場合は、基準日に法定の10日を付与したうえで、超過分の2日については、年次有給休暇の前借り付与の対象とし、基準日より前の有給取得奨励日に付与・消化させることも可能です。
また、年次有給休暇の前借り付与と一部類似する制度として年次有給休暇の「分割付与」があります。これは入社初年度の年次有給休暇について、法定の基準日(入社日から6ヵ月経過日)よりも前に、本来基準日に付与される年次有給休暇の日数のうち、一部を分割して付与し、基準日にはその残りの日数を付与することをいいます。法律に明記されたものではなく、行政通達(平成6年1月4日基発1号)を根拠として、一定の要件のもとで認められている制度です。
その要件は、次のとおりです。
①分割付与の対象となる年次有給休暇は、「入社初年度」に生じる有給休暇に限られること
②分割付与した際の残りの年次有給休暇の日数は、入社後6ヵ月を経過する日までに、すべて付与すること
③2回目の年次有給休暇は、分割付与した初回の付与日から起算して、1年以内に付与すること
④出勤率の算定においては、基準日が法定よりも前倒しされることによって短縮された期間については、すべて出勤したものとして取り扱うこと
なお、分割付与はあくまで入社初年度の年次有給休暇に限られること、および分割付与した場合には、「分割付与した日」から起算して1年後が次の基準日となる(翌年以降の基準日が全体的に前倒しとなり、年次有給休暇の管理が煩雑になる)ことに留意する必要があります。
2026年3月9日
○行政通達
(平成6年1月4日基発1号)
年次有給休暇について法律どおり付与すると年次有給休暇の基準日が複数となる等から、その斉一的取扱い(原則として全労働者につき一律の基準日を定めて年次有給休暇を与える取扱いをいう)や分割付与(初年度において法定の年次有給休暇の付与日数を一括して与えるのではなく、その日数の一部を法定の基準日以前に付与することをいう)が問題となるが、以下の要件に該当する場合には、そのような取扱いをすることも差し支えないものであること。
イ.斉一的取扱いや分割付与により法定の基準日以前に付与する場合の年次有給休暇の付与要件である8割出勤の算定は、短縮された期間は全期間出勤したものとみなすものであること。
ロ.次年度以降の年次有給休暇の付与日についても、初年度の付与日を法定の基準日から繰り上げた期間と同じまたはそれ以上の期間、法定の基準日より繰り上げること。
(例えば、斉一的取扱いとして、4月1日入社した者に入社時に10日、1年後である翌年の4月1日に11日付与とする場合、また、分割付与として、4月1日入社した者に入社時に5日、法定の基準日である6ヵ月後の10月1日に5日付与し、次年度の基準日は本来翌年10月1日であるが、初年度に10日のうち5日分について6ヵ月繰り上げたことから同様に6ヵ月繰り上げ、4月1日に11日付与する場合などが考えられること)
