労務管理事例集

労基法その他労働法

台風や大雨、強風等により、公共交通機関の遅延や休止を見越して、会社から社員に帰宅命令を出す判断基準や有給か無給かの取り扱いを教えてください。

 台風や災害が近づいている際に会社から社員に帰宅命令を出すかどうかは、法律上明確な決まりはなく、会社の判断に委ねられています。しかし、会社には社員への安全配慮義務があり災害発生時に生命や身体の安全確保について最善を尽くす必要があります。

 賃金の取り扱いは、次のように考えます。災害時など不可抗力によって事業の運営が不可能になった場合は、帰宅命令によって就業しなかった時間を「無給」扱いとして差支えありません。しかし、交通機関が止まる恐れがあったため帰宅を命じた場合は、実際にはまだ働ける状態であり「会社都合」で社員を帰宅させることになるため、休業手当などの「有給」扱いとする必要があります。ただし、社員に勤務を続けるのか帰宅するのかを選択させ、結果として社員自身の判断で帰宅した場合は、会社からの帰宅命令とはならず、休業手当等を支払う義務は生じません。

2023年11月21日 特定社会保険労務士 杉山 定広

【労働契約法】

(労働者の安全への配慮)

第五条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。

【労働基準法】

(休業手当)

第二十六条 使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。

更新日:2023年11月30日
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