労務管理事例集

安全衛生

私傷病により休職中の従業員が、リハビリ勤務を行うこととなりました。リハビリ勤務は、主治医の指導のもと、業務内容を軽減し、出勤時間を短縮して行う予定ですが、リハビリ勤務中の賃金はどのように扱ったらよいでしょうか。

 リハビリ勤務中の賃金は、復職前(休職中)、復職後のどちらの時期にリハビリ勤務が行われるかによって異なってきます。

 復職前(休職中)のリハビリ勤務については、試験的な出勤を目的とし、業務とは直接関係のない軽作業等(労務の提供に当たらないもの)を行わせるときは賃金を支払う必要はありませんが、指揮命令下で業務に従事させるときは、業務に応じた賃金を支払う必要があります。

 一方、復職後のリハビリ勤務については、債務の本旨に従った労務の提供ができる状態であるため、原則として休職前の賃金を支給する必要があります。リハビリ勤務であることを理由に賃金を減額する場合は、労働者の個別の同意が必要です。


【復職前(休職中)のリハビリ勤務の賃金について】

 休職期間中は「債務の本旨に従った労務提供」が行えない状況にあり職場復帰の判断等を目的として、本来の職場などに試験的に一定期間継続して出勤することを目的としたとき(例として、労務の提供が行われない通勤や職場での滞在、業務とは無関係な作業について)は、原則として使用者は賃金を支払う義務を負いません。ただし、休職期間中にリハビリ勤務として労務提供を受けるために使用者が指揮命令をした場合には、提供された労務の内容に応じた賃金を支払う義務が発生します。(NHK名古屋放送局事件・名古屋高裁・平成30年6月26日判決)


【復職後のリハビリ勤務の賃金について】

 復職者は「債務の本旨に従った労務の提供」が行える状態であり、リハビリ勤務は、負担を軽減して段階的に元の状態に戻すことを目的としているに過ぎないことから、原則として労働者は休職前の賃金を請求できます。そのため、リハビリ勤務(業務内容が休職前より軽減されている等)を理由に賃金の減額(労働条件の変更)を行う場合は、労働者の個別の同意が必要です。なお、労働条件を変更することなく、実労働時間が短縮された(早退や遅刻)場合は、賃金規程の定めに基づき短縮された時間分の賃金を控除することは問題ありません。

2021年12月13日

更新日:2021年12月13日
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